渡辺由佳里

ディズニー系のおとぎ話やロマンス小説は、結婚がハッピーエンドになっている。だが、現実では結婚は愛の終着点ではない。 会うたびにドキドキするときめき感(英語ではinfatuation)は相手が誰であっても長持ちはしない。同時に自分の良い所だけを見せようとする緊張感はなくなり、伴侶はじきに日常生活の一部になる。 そこに、仕事、親兄弟、家事、育児、病、家計といった現実問題が加わり、ときめきよりも苛立ちのほうが増えてくる。マンネリ化したときに、外部からの誘惑も訪れる。 結婚はロマンス小説ではなく、むしろ、山あり谷あり、危険な落とし穴がたっぷりの冒険ファンタジー小説のようなものだ。登場人物がそのまま無傷に生き残る保証はない。 たまには例外があるだろうが、最初から最後まで同じハピネスを持続できるカップルなんかまずいない。何十年も結婚している夫婦が現在ハッピーで仲良く見えるとしたら、たいていは、運命が与えた苦難を乗り越えてサバイバルした結果なのだ。 多くのカップルは、運命が与えたクエストを一緒に終えることができず、脱落する。